いい温泉宿、おいしい料理宿

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再び訪れたいお宿探訪と趣味のブログ

能登屋旅館【山形県 銀山温泉】~写真で眺めていた憧れの能登屋旅館。大正香る銀山温泉の情景と硫黄泉は長旅の疲れを和ませる~

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 温泉名にもあるように銀山温泉は銀鉱山として栄えた温泉地です。その歴史は500年にも及び銀の採掘が下火になると、温泉地として賑わいを見せたようです。しかし、1913年の大洪水で温泉街が壊滅。その後、地元企業さんの協力もあり見事に復活を遂げ、現在の温泉街が作られ当時のままの姿を見せています。

旅情

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 夜になると温泉街全体がガス灯の明かりに包まれ、なんとも幻想的な風景を眺めることができます。昼よりも夜の景色をお目当てに、日が暮れ始めると人がいっぱいに。

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 能登屋旅館さんは温泉街の奥に位置し、裏手にはかつての銀鉱山であった名残があります。大正時代からの建物は、最上部に塔屋を有した5階建ての木造建築です。画像は川側の本館となっていて、後ろの山側にはコンクリート造の別館があります。

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 温泉街の中にあって一際目立つ建物は、その歴史的価値から有形文化財に登録されています。能登屋旅館さんは確かに群を抜いていましたが、現地に行くと、文化財のような,お宿が平然と建ち並んでいたのには驚きです。

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 館内は所々に昔の装飾を見ることができますが、外観からは想像できないほどシンプルで、現代風にリニューアルされているのか古さはありません。川側はすべてお部屋になっているので、館内は廊下が多く窓がないので少し閉塞感がありました。

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 パブリックスペースで唯一温泉街を見て取れるのが、正面玄関の上にある出窓のような場所です。ここからは温泉街を臨むことができます。画像は2階部分。ちょうど玄関の真上に当たります。

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 最も目を引いたのが能登屋さんのシンボルである塔屋の下にある談話室です。ここは出窓部分の4階に当たります。入り口の扉にはガラス細工の装飾があり、さすがにこれは当時のものではないと思いますが、大正風の談話室にとても合っています。

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 梅の木?を模した窓の障子細工が見事です。一見新しそうに見えたのですが、リニューアル時に塗り直したようにも見えます。本来はここにあったものではなく、お部屋で使われていたのかなと想像しました。

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 テーブルから上を見上げると、塔屋の内側とアンティークな電飾のコラボが何とも芸術的です。こういう所を敢えて見れるようにしているのは、お宿を楽しむ粋な計らいのように感じます。

 

お部屋

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 案内して頂いたのは「清流」というお部屋です。間取りは本間10畳+前室8畳+広縁2.5畳+長廊下+水屋+洗面+トイレです。 扉を開けると凄く長い廊下が目に入ってきます。かつては館内の内廊下だったのかな。

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 廊下を進むと左に洗面などの水回りがあります。口に入れるものと手を洗う水場を別にしてあります。トイレは安心のシャワータイプ。

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 本間の床間や出書院の装飾は昔からの物がそのままに

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 他の部分はリフォームをしてあるようで、現代的な襖や壁で綺麗にされておられ、お部屋は続き間で広々と過ごすことができます。また、広縁からは温泉街を一望できる贅沢な眺めです

 お部屋の備えとして冷蔵庫、金庫、アメニティ類一式は過不足なくあります。ポットは湯沸かしのタイプで、冷水のサービスもあります。

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 お向かいのお部屋も少しだけ覗かせて頂きました。こちらは少しレトロな感じを残しつつ改修したような印象です。

 

お風呂

 湯屋は「洞窟風呂」、「展望露天風呂」、「大浴場」の計3カ所あります。展望風呂と洞窟風呂は貸切での利用です。大浴場は男女別となっています。

 お湯はすべて高温のやさしい含食塩硫化水素泉。浴室に入ると、いわゆる硫黄の香りがはっきりと分かります。味は微塩気があり、浴感はさらりとしていて癖がない。けども、湯上りは浸かっている時にはわからない艶っとした感触が残っていました。

洞窟風呂

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 フロントのすぐ隣にあって、空いていればいつでも利用ができる貸切風呂となっています。脱衣所は綺麗に改装されていて洗面台もついています。脱衣所から階段を降りていくと熱気が強くなってきて湯舟に到着です。

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 時代と共に姿は変わっていると思いますが、開業当初から利用されている元湯なのだそうです。浴室は配管が剥き出しになっていたり、コンクリートで固められています。洞窟というよりは秘密結社のアジト的な雰囲気です。手前に2人ぐらいは入れる大きさのものと、奥は小ぶりで1人用といった湯舟が繋がっています。この小さい方の湯舟にはパイプ菅から源泉と思われる「あつ湯」がゆっくりと出ていました。

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 画像見にくいですが、階段下の積まれた岩から源泉が投入されています。掛け流し量はなかなかのもので、館内の湯舟の中では源泉の投入量が最も多く感じられました。公式HPの写真などを見ていると濁湯のようですが、入浴したときは透明だったので新鮮湯だったのでしょうか。洞窟によるサウナ的効果により、浴室内はかなり暑くなります。

 ここには洗い場じゃないので、洗髪洗体は大浴場ですることになります。脱衣所の洗面にはアメニティ類一式はありました。訪れた時は、あつ湯のためか利用者は少なく、常時空いていました。しかし、湯舟に対する源泉の投入量を見ると、お湯を楽しむならこの湯舟が一番かと思います。

展望露天風呂

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 展望風呂までの道のりは遠い。本館から別館を通り、かなりの階段を上ってさらに坂道を登りきると湯屋にたどり着きます。ちょっとした山登りです。ここはチェックイン時に予約を入れる時間制貸切です。

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 浴室にシャワーが付いていますが、お湯を自然に流しているとのことで石鹸類の使用はできません。

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 注がれる源泉は控えめで、館内では一番湯量が少なかったように感じました。朝一番に予約をしたので、お湯は新鮮な状態で頂くことができました。湯量が少ないのが幸いしたのと、半露天の外気で適温で入浴できました。ある意味では最も入り易い湯舟なのかしれません。

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 木々の間から白銀の滝がわずかに見えます。展望というより森林浴といった感じです。脱衣所には無駄なものはなくティシュ、電話、コップ、時計しかありません。公式HPをみていると湯舟が新しくなっているようなので、実際は画像と異なるかもしれません。

大浴場

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 5人ぐらい入れそうな湯舟に、掛け流し口を上座とすれば、下座の切り口へお湯が溢れ出ています。翌日に利用した時には、わずかな白い濁りが見られました。

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 露天風呂は浴槽の淵から溢れ出る様を見ることができます。湯口からの掛け流し量は多くありません。宿泊者数もそれなりにあったのに、お湯は透明だったので、こちらはあまり利用されなかったのか。この露天風呂も公式HPの画像と印象が違うので、もしかしたら新しくなっているかも。

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 ここにはシャワー、カラン、ドライヤーなどが備え付けられてあり、石鹸類を使用して唯一洗髪洗体ができる浴場だと思います。

 

お料理

 夕食はお部屋出しで朝食はお食事処で頂きました。夕食には派手な創作性や演出はないですが、少し濃い目の味付けに郷土料理を中心としたボリュームのある内容です。コイやアユなどの川魚、和牛などを主に、刺身以外は朝食も地産の山の物を使用している印象です。ちょっと地味だけど素材の使いが際立ちます。

 献立は頂いた献立表をもとに書いてあります。内容に関しては説明して頂いたものと、実際口にした感想を交えて記してあります。お味などの表現は個人的な感想なのでご参考程度に見ていただければ幸いです

夕食

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【食前酒】:山ぶどう酒

【先付】:ぶなかのか油炒め、菊浸し

 山ぶどう酒の酸味は少なく甘味も中性的な味わいで自然な渋みがあります。 ブナカノカはブナの木に付くキノコです。初めて口にしましたが歯ごたえがあり、わずかに甘い香りがあります。 菊のお浸しは紫の葉をベースに黄を混ぜて色をとり、しっとりと甘い醤油に蕎麦の実を散らしてあります。山形や新潟では菊の花を郷土料理として食する習慣があるようです。場所によっては「もって菊」という名前で出たのを見たことがあります。

 

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【前菜】:かもロース、まこもたけ、あけび印籠、渋皮栗

 カモは皮の部分の煮崩れが見られ、手作り感があるのでお宿で調理しているのでしょうか。 マコモタケはキノコではなく太くなる稲のような植物です。 印籠は中に詰め物をする調理する方法をいいます。 開いたアケビに詰められていたのは味噌かな? 栗の渋皮煮はケシの実をもたせて鬼皮を演出しています。全体としての味付けはしっかりとしてお酒が欲しくなります。どれも旬のものが揃っているのがいいですね。

 

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【御造り】:季節のお刺身

【御凌ぎ】:蕎麦

 お造りはサーモン、ヒラメ、コイの洗いの三種盛りです。切り口は脂の照りがあり、なかなかの活かり具合です。お刺身は普通においしく可もなく不可もなく。濃い口の醤油で頂きます。つまは紫蘇花、海藻クリスタル、大葉、山葵、蓼。

 お凌ぎの蕎麦にコシはあるのですが、十割蕎麦にあるようなボソボソとした感触もあり蕎麦の風味はしっかり。濃い目の麺つゆを合わせてあります。蕎麦の形状や触感からすると手打ち?でしょうか。

 

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【煮物】:鯉の甘露煮

【小鍋】:尾花沢牛しゃぶしゃぶ

 能登屋さんの甘露煮は今まで口にした中でもなかなかの濃い醤油味。かなり強く炊いてあるので、脂が抜けたのか見た目以上にあっさりに仕上がっています。そのため、脂のクドさやクセはなく食べ易くなっていました。

 小鍋のお献立には「牛しゃぶ」とだけ記載されていますが、牛と豚の食べ比べになっていました。牛肉は銀山温泉のある尾花沢市産のブランド牛です。部位はロースで赤身が多い霜降り具合で上質な和牛の味です。豚の銘柄はわかりませんが、こちらもロースで臭みのない国産特有の甘い旨味があります。これをポン酢と胡麻ダレの2種の味で楽しみます。付け合わせは水菜とエノキです。

 

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【焼物】:あゆ塩焼き、みょうが酢漬け

【箸休め】:西瓜の漬物

 西日本では9月はアユは終盤ですが、東北ではアユはまだまだ旬なのでしょうか。身が良い程に乗っていて大ぶりで食べ応えがありました。焼き立てではないですが、塩加減は控えめに温かく配膳されます。

 おしながきには記載がないサービス品のスイカの漬物です。調べると山形の尾花沢市の特産「茄子のぺそら漬」のようなものでしょうか。キュウリのような青臭さはない古漬けで、酸味、塩味、辛味が強いお酒のお供です。

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【蒸し物】:養老蒸し

【酢の物】:滝川豆腐

 養老蒸しは魚介類と野菜、蕎麦などに、とろろヤマイモを掛けて蒸した料理を言います。キクラゲと銀杏は憶えていますが、あまり確認せずにお腹へIN。先人たちの記録をみていると季節によって内容は季節のものに変わっているようです。濃い味のものが多いお料理の中では餡は薄味で関西風。

 滝川豆腐の白い斑点模様はお豆腐を潰して寒天で固めた名残でしょうか。滝川豆腐の味はやさしく、まろやかな酸味がある濃い口の醤油に浸してあります。これに薬味の練り辛子でアクセントをつけます。

 

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【御飯】:山形産 つや姫

【御椀替り】:芋煮

【香の物】:かぼちゃ、茄子、野沢菜?の3種盛り

 山形県の郷土料理の芋煮とお食事のセットです。芋煮は止椀に当たるのですが、完全に大鍋です。会席終盤にはとても量が多く、脂と味が濃く胃袋にストレートを打ち込んできます。ただ、お出汁は全く濁りのない和牛出汁で、すき焼きのように食べれて美味なのがまた困る。お肉が大量に入っていて和牛の脂の香りは、とても贅沢な芋煮なのに、すでにお腹いっぱい。そして、相方は最後までペロリ。自分はパタリ。せ・・・せめて生卵があれば。香の物も変わっておりカボチャの浅漬けが入っています。

 

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【水物】:かぼちゃブリン、梨、マスカット

 水物も旬のもの。かぼちゃプリンは果肉の舌触りは自然のままで濃密。東北では早めではないと思われる終夏の梨とマスカット。果実の甘味は旬の絶頂に比べると弱くもあるが、先物としてのプレミアム感があります。

朝食

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【籠盛】

・小松菜のお浸し ・刺身こんにゃく酢味噌 ・ゼンマイの白和え

・ワラビの醤油漬け? ・梅干し、お新香、古漬け胡瓜 ・ブルーベリーヨーグルト

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【長皿】

・焼鮭 ・玉こんにゃく、練り辛子 ・稚鯉の甘露煮? ・蕗味味噌

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【一品とお食事】

・手作り豆腐の冷奴 ・温泉卵、お塩 ・煮物(大根、しめじ、練り物のてんぷら)

・サラダ(ポテトサラダ、サニーレタス、キャベツ、キュウリ、フレンチドレッシング)

・大根飯、きのこの味噌汁

 品数は多く珍味とお野菜が中心のお料理が並びます。籠盛は山菜や刺身こんにゃくと言ったヘルシーな小鉢が揃い、長皿は郷土料理のプチ詰め合わせです。一口ずつ郷土感のあるものを口にすることができます。手作り豆腐は大豆の風味が濃厚で、煮物は後から温かく配膳されるます。お味はお米に合うというよりも、朝からお酒が欲しくなります。肉、魚類が少なく朝からガッツリという方には少し物足りないかもしれませんが、私的にはお昼時に丁度お腹が減っているぐらいで適量でした。

 

まとめ

 温泉街の風景は肉眼と写真とでは全く異なる景色です。温泉街の中に身を置くと、凄く立体感で建物のスケールは一層大きく見え、ガス灯の演出でうっとりとした景色に見入ってしまいます。能登屋旅館さんの外観は木造旅館の古さはなく鉄筋?と思わせるほど手入れされて美しい。館内は全体的にリフォームされている感じで当時の趣きは所々に見受けられる程度に。この当たりは仕方がないと思いつつ。 温泉に関しては勝手に濃厚温泉だと思い込んでいたので、何ともまろやかな硫黄泉だったのが意外でした。源泉の温度が高いので、次回は冬に訪れてゆっくりと浸かりたいものです。 お料理は昔ながらの郷土料理を提供しつつも、ボリュームがあり美味しく頂けるものばかりです。ただ、北国のお料理ということもあって、味付けが濃いので後半はやや重たい感じがしました。

宿泊料金

 東北地方に訪れる機会がほとんどないので、旅行の計画に能登屋旅館さんの宿泊を入れ込めないと試行錯誤していました。二間続きのお部屋が空いていたので公式HPから予約。公式HPの古風なお部屋と思っていたのですが、訪れると「清流」のお部屋だったのでがっくし。清流のお部屋がダメというわけではなく。やっぱり電話でちゃんと確認しないという教訓です。平日泊でしたが、お値段はお部屋のランクが高かったのと繁盛期だったのでそれなりです。

宿泊日:2018/9(平日泊)

旅行サイト:能登屋公式HP

部屋タイプ:10畳+8畳本館

合計料金:45660円(入湯税、消費税込み)

 

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